令和2年度卒業証書授与式が3月3日(水)、本校体育館で挙行されました。
今回、卒業証書授与式は、新型コロナウイルス感染防止対策を施し、卒業生並びに保護者の方は、一世帯一名様と教職員だけの式典となりました。
本来であれば、当日卒業生にいただく予定であった拓殖大学 森本 敏 総長からの祝辞(抜粋)を掲載します。
令和2年度 卒業証書授与式 祝辞
(抜 粋)
この度、卒業式を迎えられた拓殖大学第一高等学校の皆さんに、心から卒業のお祝いを申し上げます。新型コロナウイルスの関係で、卒業式はいつもとは異なる形になりました。私も卒業式に参列して皆さんにお礼の言葉を申し上げようと思っていましたが、叶いませんでした。
しかし、このように、人は生きている間に、何が起こるか予想もつかないことがあるのです。皆さんはこれからの人生でいろいろな困難を何度か経験すると思います。その都度、何があっても自分が生き残り、そして、自分の両親や、さらに将来、家庭をもてば自分の家族を守って生きていく、それが皆さんの責任です。
人は生き物です。地球という環境の中に他人と社会を構成して生きています。環境からくる困難とは災害です。防災という言葉があり、災害を予知することは少しできるようになったものの、人間の知恵で自然災害を止めることはできません。あとは災害が起こっても被害を最小限するためにあらかじめ備えをしておくこと、そして、災害が起こった後には早く現状を回復する努力をするしかないのです。もう一つの困難は、テロや紛争などの社会を構成する人間が引き起こす困難です。しかし、これは我が国の場合、最小限に食い止めることができています。問題は自然でもない人間でもない原因で発生する困難、それが今回の新型コロナウイルスです。我々はこうした不可解な現象の原因を突き止め、再び、同様の感染症が流行らないように人間の英知を結集して困難に立ち向かう責任を有しています。
皆さんはこれから大学や専門学校に入り、学問を究め、自分の人生とはどうあるべきか、自分は何をして生きていくべきかを考えつつ、必要な学問的素養を身に着けて社会に参入してください。これからもいろいろな困難に直面するかもしれません。しかし、何があっても忍耐強く生きて、他人にはできない仕事、他人にはまねのできない自分の人生を力強く生きていく必要があります。その究極的目標は自らの天職を見つけることです。
学生生活に自分の明確な目標と方針をもって立ち向かうことは重要です。1学年の春から計画的に自分の決めた目標と方針に向かって着実に実行しなければ到底、目標を達成できません。学生は同時に社会人になるための基礎的素養を身に着けることが求められます。
皆さんは、今後、忙しい高校生活ではできなかったいろいろな活動を大十分、楽しみたいという願望を持っていることと思います。特に、文化活動、芸術や趣味、あるいは、音楽や演劇など幅広い分野の中から生涯にわたって続けられる得意分野の社会活動に専念することができるのも学生の特権です。生涯にわたる自分の得意分野として、また、他に誇ることのできる分野を究めること、これも学生の特権です。
また、学生の間には勉学だけでなく社会体験をしてください。海外も見てください。できればアジアの途上国をじっくりとみて、この地域やそこに生きる人々がなぜ、現状のようになっているのか、日本は何をすべきか、自分は何ができるかを考える機会を作ることが必要です。
また、社会貢献の機会も探してください。ボランティア活動をすることも良いと思いますし、社会福祉・介護・被災地支援や地域社会の伝統的な文化活動や社会開発問題の活動に従事することもお勧めします。このような経験をすると社会人となる際に、大変重要な視点になります。
人間の一生とは試練の連続であり、気を抜いた人が落ちこぼれ、結果として将来の生き方までが決まる厳しい競争社会です。また、学生は大人です。私は米国で教育を受けましたが、米国の大学生は全ての事柄において大学生になった時点で自己責任を果たせる人という扱いを受けるようになります。明日から皆さんは社会人として、あるいは学生として、そのように振舞うことが求められます。
本校でお世話になった教職員の御恩を忘れることなく、また、この高校生活を深い愛情で見守っていただいたご両親への感謝も忘れず、また、高等学校3年間に共に励まし、親しく交流ができた同級生の友人に対して、生涯にわたり、真の友人として共に生きていくことを誓いつつ、明日に向かって勇気をもって進んでいただきたい。力強く生きて、いろいろな困難を乗り切ってください。皆さんのご健闘を心から期待しつつ、拓殖大学総長として皆さんの卒業の日にあたり送る言葉とします。
令和3年3月3日
学校法人拓殖大学総長 森 本 敏